
B型事業所の工賃を上げるには?「仕事づくり」から考える
2026年09月21日 15:05
就労継続支援B型事業所を運営していると、「どうすれば工賃を上げられるのか」という課題にぶつかることがあります。
工賃規程を見直したり、作業時間を増やしたりすることも必要ですが、それだけでは継続的な工賃向上にはつながりません。
工賃を上げていくためには、その前に「事業所として、どのような仕事で売上をつくるのか」を考える必要があります。
工賃は「仕事の結果」として生まれる
B型事業所では、利用者に仕事を提供することが目的になり、「何か作業を用意しなければ」と考えてしまうことがあります。
しかし、先に作業をつくってから「これをどう販売しようか」と考える方法では、十分な売上につながらないケースもあります。
重要なのは、
誰がお金を払ってくれるのか。
なぜ、その商品やサービスを買ってくれるのか。
を先に考えることです。
「作業をつくる → 売る」ではなく、
「お客様が必要としている商品・サービスを考える → 利用者が担当できる工程に分ける」
という順番で考えることが重要です。
「作業」ではなく「事業」をつくる
例えば、利用者が好きな絵を描き、それをポストカードにして販売すること自体が悪いわけではありません。
ただし、工賃を継続的に上げたいのであれば、
・実際にどれくらい売れるのか
・継続して注文が入るのか
・利益を確保できるのか
まで考える必要があります。
B型事業所の仕事づくりでも、
商品・サービス
↓
集客
↓
販売
↓
受注
↓
制作・提供
↓
売上
という流れが必要です。
福祉事業であっても、生産活動の部分には「事業としての視点」が欠かせません。
工賃を上げやすい仕事に共通する3つの特徴
1.外部のお客様から売上が発生する
事業所内部だけで完結する作業ではなく、一般のお客様や企業から対価をいただける商品・サービスを持つことです。
外部から売上が生まれる仕組みができれば、生産活動を拡大できる可能性も高まります。
2.繰り返し注文が発生する
一度だけ売れる商品よりも、継続的に注文が入る仕事の方が安定します。
例えば、
・オリジナル商品の制作
・EC販売
・デザイン制作
・印刷・加工
・リラクゼーション
・企業からの継続受注
などがあります。
単発の仕事だけでは、利用者の仕事量も工賃も安定しにくくなります。
3.利用者が担当できる工程に分けられる
売上が大きい仕事でも、一部の職員しかできなければB型の仕事として広がりません。
例えばオリジナルTシャツ制作であれば、
デザイン
↓
データ確認
↓
プリント
↓
検品
↓
梱包
↓
発送
と工程を分けることができます。
一つの事業の中に複数の仕事をつくることで、利用者それぞれの得意・不得意に合わせやすくなります。
高工賃を目指すなら「専門性のある仕事」も選択肢
B型事業所の仕事というと、袋詰めやシール貼りなどの軽作業をイメージする方も多いと思います。
もちろん、軽作業が合う利用者もいます。
一方で、デザイン、Web、動画、ものづくり、美容、リラクゼーションなど、専門技術を必要とする仕事もB型の仕事として考えることができます。
専門性があり、お客様がその技術やサービスに対して対価を支払う仕事であれば、仕事そのものの付加価値を高められる可能性があります。
重要なのは、「珍しい仕事をすること」ではありません。
お客様から必要とされる技術やサービスであるかどうかです。
外部受注を増やすには「営業導線」が必要
「Web制作をしています」
「SNS運用をしています」
「動画編集をしています」
と書くだけでは、継続的な仕事につながるとは限りません。
外部から仕事を受注するのであれば、
・公式ホームページ
・サービスページ
・問い合わせフォーム
・LINE
・Googleビジネスプロフィール
・SNS
・広告
・ECサイト
・外部メディア
など、お客様が仕事を依頼できる導線が必要です。
仕事をつくることと、仕事を取ってくることはセットです。
B型事業所の生産活動を考える際には、支援だけでなくマーケティングの視点も重要になります。
利用者募集と仕事づくりは別々ではない
仕事づくりを強化すると、利用者募集にも影響します。
利用希望者は事業所を選ぶ際に、
「ここで何をするのか」
「どんな技術が身につくのか」
「どれくらい工賃があるのか」
を見ています。
仕事内容が具体的であればあるほど、自分が働いている姿をイメージしやすくなります。
良い仕事をつくる
↓
工賃が上がる
↓
仕事内容を具体的に発信できる
↓
利用希望者にも選ばれやすくなる
という循環をつくることができます。
幸福堂でも「仕事づくり」から考えてきました
デジタル工房幸福堂では、オリジナルTシャツ制作を中心に、デザイン、プリント、検品、梱包、発送、EC販売など、実際の事業と連動した仕事をつくってきました。
さらにリラクゼーション事業では、オイルリンパマッサージの技術を身につけ、実際の店舗で仕事に取り組む仕組みも導入しています。
令和7年度の平均月額工賃は51,311円となりました。
ただし、工賃だけを目標にしてきたわけではありません。
先に考えてきたのは、
「利用者が取り組める仕事をどうつくるか」
ということです。
仕事があり、売上があり、その中で利用者が技術を身につけていく。
その結果として工賃につながる仕組みをつくることが大切だと考えています。
工賃を上げるなら、まず「何を売るのか」を見直す
B型事業所の工賃を上げたいと考えたとき、最初に工賃額だけを見直すのではなく、
「事業所は何を売っているのか」
から考えてみる必要があります。
・誰がお客様なのか
・何にお金を払ってもらうのか
・継続して注文が入るのか
・利用者が担当できる工程があるのか
・その仕事をどう市場に伝えるのか
こうした一つひとつの仕組みを整えることが、結果として工賃向上につながっていきます。
B型事業所だから特別な経営方法が必要なのではなく、福祉の支援と、事業として成り立つ仕事づくりの両方を考えることが重要ではないでしょうか。